20年後の社会を見据えて


弘本 社会の健全性基盤になっている、そう感じます。
また、職住が近接しているからこその充実した社会の仕組みがあります。企業や工場が市民のための学習会や見学会を開き、そこでの出会いからものづくりやビジネスが生まれたり、子供たちが夢を持つことにつながる。それが知のクオリティを高めていくし、個人の生活の質も確実に高まるというループができる。

後藤 知のクオリティという言葉が響きました。知のクオリティを高めるには、ライフスタイルと密接につながりますね。

これからの20年

後藤 吹田の人口は増え続けています。小学校や保育所の新築や増築など新たなインフラ投資を進めています。でも、20年後はどうでしょうか。
一旦大きくなった都市が、今転換期を迎えています。都市の豊かさを持続するには都市機能をうまく複合化、集約化しなければならない、と考えます。それは単なるシュリンク(縮小)ではなく、豊かさを未来につなぐための知恵です。

弘本 おっしゃる通りだと思います。これはわが国が初めて経験するまちづくりですし、簡単ではありませんね。

後藤 これからの公共施設のあり方においてキーワードは「分野横断」「有機的複合性」だと思います。その視点に立たないとこれからの20年は持ちこたえられないでしょう。

弘本 吹田市は博物館も運営されて、頑張ってらっしゃいますよね。今の流れで怖いのは、表面的に入館者数を稼ぐ、という方向性ですね。

後藤 定量的な指標での評価ですね。

弘本 そうなんです。例えば図書館も同じ流れになるとまずいなと思っています。知の共同化の回路を地域に組み込んでいくために、図書館や博物館は大きな役割を果たしています。時間軸で自分のまちや地域を捉える、という視点を住民が持つこと、そういう意識で運営することがまちの将来に効いてくるでしょう。

後藤 知のクオリティを支える大切な地域インフラと言えます。

弘本 それだけに安易な民営化や委託化は危険ですね。将来の市民を育む場所の喪失として、決定的な問題になっていきますよ。

後藤 ある時から、定量的に行政評価をする傾向が強くなりました。最も安直な経済指標を用いて意義が評価され、それに反論しづらい、といった。ここをどう反論できるか、が問われています。経済的に、生産性向上にどうか、という分かり易い尺度に対して、非定量的な価値観を真正面からぶつけることができるか、それが問われています。

弘本 そうなんですよ。最近は社会的インパクト評価というものもありますけど、それだけでも限界があると感じています。ひとつの施策だけではなく、相互につながってその自治体やコミュニティの中でどう効果をあげているか、という相互性をきっちり見る。
図書館も図書館だけがどうこうというわけではなくて、図書館と他のものがつながりながら、どう社会的な効果をあげていくのか、と言うことこそ、とても重要なのではないかと思っています。

後藤 単体での財政的評価の前では無力な分野は多いですね。
博物館や図書館のみならず、文化、芸術、スポーツ、公園、みどりなどの価値をどのように認識しているのか、それは街の品格と強く結びついていると思います。吹田はその価値をしっかりと守り未来につながなければならない、吹田に育ててもらった私は心からそう思うのです。

弘本 それはすばらしい、うらやましいです。

後藤 ところで、少し先を俯瞰的に見ると、北摂がゆるやかにひとつのエリアとなり、社会の財を共有する時代になると考えています。いわゆる「圏域」という発想です。合併でも一部事務組合でもありません。分野ごとに誇るべき北摂ブランドを持つというイメージです。

弘本 そうですね。北摂という言葉でくくられること自体は、違和感がないですもんね。市域を越えたブランド連携には、特に北摂においてはプラスな気持ちの方が大きいでしょうし。

後藤 吹田って、食パンでいうと耳がない、真ん中のおいしいところだけかも知れません。山林や大きな河川、港や空港もなく、良好な住宅地が広がっている。ニュータウンや万博など国家的なプロジェクトにより高質なまちづくりが進み、多くの人が集まってきた。
そんな吹田の特殊性も含めて、これからの都市の豊かさを見える化する責任はあると感じています。

弘本 モデルではないかもしれないけれど、実験都市的なものですよね。その責任を果たしていくのは、重要なことだと思いますね。

さいごに

後藤 最後に、吹田に住んでいる人の話し方ってどう感じますか?

弘本 そういえば、べたべたの大阪弁ではないですね。

後藤 吹田は全国から転勤族が転入されます。その数、毎年2万人ほど。

弘本 それはすごい!西宮市とも似ているところがありますね。

後藤 全国から転入して来られる方々は方言ではなく標準語を話されます。そうなると、吹田ネイティブの我々も方言を少し控え目にしてしまいます。地域全体がそういう話し方、いわゆる「ネオ関西弁」になっていると指摘されています。
流入人口が多いと、NPO活動も活発になります。数年以内に異動すると思うと腰を据えた自治会活動ではなく、趣味や考えを共有できるグループに参加して社会とつながる傾向を感じます。その強みと弱みが吹田市にはあります。

弘本 それこそドイツ型が適した街ではないですか?狭い地域のスポーツクラブではなく、もっと広域でつながるんです。ただ楽しむだけのところもあれば、プロの競技者がいるクラブもあって、自由でいろんなレベルで楽しめるんです。
そんな人々のつながりが、豊かなコミュニティ、豊かな社会の基盤になっていると感じますし、これからの人口減少、超高齢社会を生きる私たちへのソリューション(解決策)を示していると思います。

後藤 おっしゃるとおりです。豊かな暮らしには「会う人、すること、行くところ」が必須要素だ、また、「外出なき交流、交流なき外出」にならないように、と。今日はその重要なヒントをいただくことができました。ありがとうございました。


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