20年後の社会を見据えて


対談のお相手 弘本由香里さん
CEL(大阪ガス株式会社 エネルギー・文化研究所)特任研究員。暮らしを支えるコミュニティデザインの研究者で、職員時代から様々なご示唆をいただいてきました。

この20年で変わったこと

弘本さん(以下敬称略) CEL(大阪ガス株式会社 エネルギー・文化研究所)は、1986年、バブル経済期に設立され、長期的な視点を持つことを理念として設けた、当時でもめずらしい企業内研究所です。先日も、20年後をどのように捉えるかの議論をしていました。

後藤 行政は原則単年度会計、政治は4年任期、市民生活は毎日のこと。20年先というと、なかなかイメージすることが難しいですが、20年後にはちょうど吹田にとって市制施行100周年にあたります。さて、先の話に入る前にこれまでの20年で感じる変化は?

弘本 ネットによる「つながりすぎるリスク」です。これまで称賛されてきた「つながる良さ」がもたらした情報格差です。それに気付き始めた旧中間層と呼ばれる人たちが、今ナーバスになっています。
即座につながることで発生するリスクに、無防備な子供や若い女性がさらされています。経済面でも、世界規模で同時に危機が起こるリスクが明らかになってきました。
つながることへの見方がこの20年でずいぶん変わってきたと思います。

後藤 中間層という言葉が出てきましたが。

弘本 新興国の中間層はどっと増えていますけども、先進国ではその反対です。また、経済成長が必ずしも人々の満足や幸せにつながっていない、という結果も出ています。
とすると、先進国、先に成熟してきた国は世界に何を示してきたのでしょう。そのことを自覚している国々は、単なる経済成長ではなく次の世代への投資や格差を縮める取組を進めています。
一方、日本では、例えば家族構成、共働きを前提として社会が動いているのに、標準家族のイメージに専業主婦の残像があります。共働き標準家族に、社会システムが追い付いていません。高度成長から今まで、制度の前提となる社会条件を見直して来ませんでした。

豊かさとは

 後藤 先進国が、“先進”たる望ましいモデルを形にできなければ「進むこと」そのものの自己否定になってしまいますね。
例えば人類共通の願いである長寿。それを実現したわが国の社会が個人が「幸せ」を手に入れたのか、は世界から注目されていると思います。
しかし現実には、夢を実現した社会で報道されるのは、社会保障費の負担や介護人材の不足など、ネガティブなニュースばかり。
寿命の短い国はこのようなネガティブなメッセージをどう受け取っているのでしょう。私たちは、定年後20年経っても、いきいきと暮らしていける社会を実現しなければなりません。

弘本 AIの議論にも共通するところはありますね。AIが普及したら新たな仕事が生まれるに違いないと思いますが、今の仕事がなくなると、人間は自らの存在価値に疑問を持ってしまう可能性があります。
年を重ねた人たちが自己肯定感を持って生き続けるには、ということを、社会全体としてきちんと考えなければなりません。
ある調査によると、経済的な不安は、リーマンショック時より改善しているのに、ネガティブな意識は強まってきている、誰の役にも立ってないという、つらい感情が徐々に増していっている、と。これは若い世代も含めて。

後藤 幸せは「必要とされている」という気持ちと深くつながっていますね。気持ち、ということで言うと若年層、AYA世代のハングリー精神が弱まっていませんか?ある意味社会の成熟とも捉えられるかも知れませんが。


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