瀬戸大橋


6つの大橋が本州と四国をつないで30年が経ちました。巨額の予算と10年の工期、そして最先端土木技術を投入した世界屈指の大事業でした。

着工の2年ほど前、大学生の私は、研究の一環で児島(こじま)・坂出(さかいで)ルートに沿って海底を撮影するプロジェクトに参加していました。橋の建設により漁業や海洋環境に及ぼされる影響を事前に調べるためです。

ダイビング経験があるとはいえ、ここでは勝手が違いました。備讃(びさん)瀬戸と呼ばれるこの海域は潮の流れがとても速く、まるでごうごうと流れる川のよう。しかも季節は真冬。暗く冷たい海が容赦なく私を打ち据えます。そんな中、酸素ボンベを背負い大きな機材を抱え、流されないよう必死にアンカーロープにつかまりながら海中を行き来する。これはダイビング というよりも「潜水労働」そのものでした。

橋の雄姿を目の当たりにすると、あの厳しい体験を今も鮮明に思い出します。その経験から、これから社会に出ようとする私は体で学んだのです。世の事業、大きなプロジェクトが成功するプロセスには、時に危険に立ち向かう名もなき「ダイバー」がいるということを。

(2018.7)


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